「8020運動」を知っていますか?
「8020運動」とは、「80歳になっても20本の歯を残そう」という目標を掲げた健康運動です。この運動は、日本の厚生労働省と日本歯科医師会が推進しています。なぜ20本が目標なのかというと、人は20本以上の歯があれば食事を楽しむために必要な「噛む力」を十分に保つことができるからです。食べ物をしっかりと噛めることは、消化を助け、栄養吸収を促進し、全身の健康を維持するためにも重要です。
8020を達成するためのポイント
では、80歳で20本の歯を保つためにはどのようなケアが必要なのでしょうか?以下に、8020を目指すために欠かせない3つのポイントをご紹介します。
1. 毎日の正しい歯磨き習慣
まず、毎日の歯磨きが基本です。食後の歯磨きはもちろんのこと、寝る前にも必ず歯を磨くことで、むし歯や歯周病のリスクを減らせます。ポイントは「歯と歯の間」や「歯と歯茎の境目」を丁寧に磨くことです。歯間ブラシやフロスを活用し、ブラシが届きにくい隙間もしっかり掃除しましょう。
また、歯磨きの時間も大切です。1~2分でさっと磨くのではなく、最低でも3分以上かけて丁寧に磨くことが推奨されています。適切な時間をかけることで、プラーク(歯垢)や食べカスが残りにくくなり、口腔内を清潔に保てます。
2. 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア
次に重要なのが、歯科医院での定期的な検診です。むし歯や歯周病は初期症状がほとんどないため、自分では気づきにくいことが多いです。数か月に一度は歯科医院でチェックを受け、プロフェッショナルによるクリーニングも行いましょう。歯周ポケットの深さや歯茎の状態を確認し、早期にトラブルを発見することで、歯を長く健康に保てます。
また、歯科医師や歯科衛生士から正しい歯磨き方法や食生活のアドバイスを受けることも、8020を達成するための大きな助けとなります。
3. 歯に優しい食生活の心がけ
歯の健康を守るためには、食生活も大切な要素です。特に、砂糖を多く含む飲み物やお菓子はむし歯のリスクを高めるため、適度に摂取することが大切です。お口の中に糖分が長時間残ると、細菌が酸を産生し、歯のエナメル質を溶かしてむし歯が進行しやすくなります。
逆に、歯を丈夫にするカルシウムやビタミンD、さらに唾液の分泌を促進する食物繊維が豊富な野菜や果物など、バランスの取れた食生活も心がけましょう。唾液には、口腔内の細菌を抑制する効果があるため、よく噛んで食べることも大切です。
歯を失う原因はむし歯と歯周病
日本で歯を失う主な原因は、「むし歯」と「歯周病」です。これらは、適切なケアを怠ることで進行するため、日々の予防が非常に大切です。
むし歯について
むし歯は、口の中の細菌が糖分を分解して酸を作り出し、その酸が歯を溶かして穴を開ける病気です。初期のむし歯は痛みがないため気づきにくいですが、放置すると神経まで到達し、激しい痛みや歯の喪失につながります。
歯周病について
歯周病は、歯と歯茎の間に細菌が増殖し、歯茎に炎症を引き起こす病気です。進行すると、歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。特に、中高年の方が歯を失う原因として多いのがこの歯周病です。定期的なケアと検診で予防しましょう。
8020を達成することで得られる健康効果
80歳で20本の歯を保つことには、単に歯の健康だけでなく、全身の健康にも良い影響があります。
1. よく噛んで食べることによる消化の改善
歯がしっかり残っていると、食べ物を十分に噛んでから飲み込むことができ、消化器官への負担が軽減されます。食べ物をよく噛むことで消化を助け、栄養の吸収が促進されるため、健康的な体を維持することが可能です。
2. 脳の活性化
噛むことは脳の血流を増やし、認知機能の維持にも役立つとされています。特に高齢になると、噛む力が衰えることで認知症のリスクが高まるといわれています。歯がしっかり残っていることで、日々の食事が脳に刺激を与え、健康な脳を保つ一助となります。
3. 楽しい食事と豊かな生活
歯がしっかりしていると、硬い食べ物や多様な食材を楽しむことができ、食事の満足感が高まります。おいしく食事を楽しむことは、生活の質を高め、心身の健康にもつながります。
今からでも遅くない!8020を目指して始めよう
「8020運動」は、若いうちから予防を始めることが理想ですが、年齢に関係なく今からでも取り組む価値があります。日々のケアと定期的な歯科検診を通じて、80歳で20本の歯を目指しましょう。歯が健康であれば、豊かで活力のある生活が長く続きます。あなたも「8020」を意識して、歯を大切にしていきませんか?
執筆者
杉山デンタルクリニック 院長
東京歯科大学卒業後、杉山デンタルクリニックの院長となる。
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医で、臨床研修指導歯科医師の資格も保有。多くの病院で口腔外科疾患やインプラント治療に従事し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を提案しつつ、患者さんのQOL向上を目指す。